2014.06.03

イイホシユミコさんの手あとを残さないものづくり

手あとを残さないものづくり 磁器作家・イイホシユミコさん

手づくりとプロダクトの境界にある器を標榜する磁器作家のイイホシユミコさん。
彼女の志す「手あとの残らないものづくり」の極意とは?
一点物ではなく量産品を手掛ける理由とは?
シンプルなのに味わい深く、使うほどに愛着が増す、イイホシさんの器の秘密をうかがいました。

つくりたいのは、自分自身が長く使い続けられるモノ。

東京・世田谷区にあるイイホシさんのアトリエ。器のアイデアができたら、まずその器の絵をデッサンで描き、内径や深さを決めます。その際に使う木のコテもすべて手づくり。

少女のように小さな掌と華奢な指。しかしそこから生み出される作品は、決してフラジャイルな印象ではなく、スッと潔く凛々しい。それでいて、強く自己主張することなく、楚々と奥ゆかしい。イイホシユミコさんのつくる器は、ひんやり滑らかな磁器やガラスの奥に、不思議な生命力がひっそりと宿っています。

 

「私がつくっている器は、基本的に私自身が長く使いたいものです。自分でつくった器は、実際に普段の生活の中で使っています。毎日使っていて飽きがこないかということも大切なポイントですから」というイイホシさん。発注ベースで器をつくる際も、用途や容量などの条件はあるものの、すべて彼女自身が使いたいものという点で共通しています。そのため、シリーズが違ってもトーンがそろっており、どの器を合わせても心地よく調和します。

食器の箱も自分のイメージに合う専用箱を紙の素材からこだわってデザイン。彼女自身がよく使うというOXYMORONシリーズの器は、緑にも黒にも見える釉薬の表情が絶妙です。

イイホシさんの器は、釉薬の色彩も特徴的です。各窯元の職人に釉薬の調合を指定したり、見本色に合わせて独自のカラーをつくってもらったりしているそう。

 

「私は釉薬の表情が出る色をあえて選んでいるので、器も微妙に表情が違います。その分、色は安定しにくいのですが、色味にある程度の幅を持たせることで、量産と手づくりの境にある味わいが出るのではと思っています」

 

瀬戸焼、有田焼、波佐見焼、多治見焼、信楽焼など、制作を依頼している窯元も、器によってさまざま。生地一つ、釉薬一つとっても、その土地や窯元によってまったく異なるので、安定した生産に至るまでの道のりは決して平たんではありません。

「ステンレスは一見冷たい感じだけれど、磁器のカップと合わせるとすっきり見えます。そういう組合せを提案したくてつくりました」というイイホシさん。今後もステンレスのアイテムにトライしていきたいそう。

「私のつくっている器は、量産には向かない量産品なんです。でも、それが私の作風だから、時間がかかっても追求していきたいです。生きている間に、あとどれくらいつくれるんだろうと思いますね」と笑うイイホシさん。奇跡的に窯元とのマッチングがうまくいくこともあれば、試行錯誤の末に頓挫している作品も多いのだとか。ともすれば、彼女の求めている世界は、一点物の作品を完成させるよりも大変なのかもしれません。

 

作品をつくる時は、アトリエで弦楽奏や女性の声楽などのクラシックやロックなどを聴きながら制作することが多いそう。音楽や映画が好きな彼女は、それらにインスピレーションを受け、そこからどんどん妄想が膨らんで器のイメージが浮かんでくることもあるのだとか。

 

 

Profile

イイホシ ユミコ

京都嵯峨芸術大学陶芸科卒業後、「yumiko iihoshi porcelain」の名前で作品を発表。2007年よりプロダクトシリーズを手掛け、2008年からは海外展示会への出品も開始。2012年より世田谷区池尻にアトリエを構え、2013年に大阪に直営ショップをオープン。

ショップ情報

yumiko iihoshi porcelain shop OSAKA

大阪府大阪市中央区伏見町3-3-3  芝川ビル301
TEL:06-6232-3326
http://www.y-iihoshi-p.com

彼女の作品は、日本はもちろん、韓国やシンガポール、フランス、アメリカなどでも愛好者が増えています。ブログで彼女の器に料理を盛り付けて公開している人も少なくありません。

 

「私のつくった器を使っていただくことで、その方がいつもより豊かな時間を楽しんでくださったなら、それが私にとっては何よりもうれしいことです」

 

 

Text:Satsuki Kutsuwada Photo:Mikako Ito
Coverage Cooperation:ARIGATO GIVING

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