2014.09.21

ステキものづくりびと  バッグデザイナー KISSACO・岡本由梨さん

ステキものづくりびと  バッグデザイナー KISSACO・岡本由梨さんステキものづくりびと  バッグデザイナー KISSACO・岡本由梨さん

ブラジル、パナマ、コロンビア……。世界各国から届くコーヒー豆の運搬に欠かせないのが麻袋。
その美しさを見いだし、おしゃれで丈夫なトートバッグに仕立てた岡本由梨さん。
今あるものを無駄なく使う。捨てられるはずのものが甦る。
そんなリユースの心と技が昇華して、唯一無二のプロダクツが生まれました。

 

 

胸を張って、開示できるものづくりが
世の中を変えていく力になる

 

アートや旅、音楽を愛する多才な岡本さん。転機となったバッグつくりに出会うまで、そして出会ってからも、自分の内なる声と向き合い、まっすぐ進んで来たことは一貫して変わりません。使い込んだカット台。コーティングされる前の麻袋。「こんなに美しいのに、もったいないですよね」。岡本さんが使わなければ、廃棄される運命でした。

 岡本さんのトートバッグに生まれ変わるコーヒーの麻袋。表はビニールでつややかにコーティング、さらにコットンツイルで裏打ちすることで、しなやかでなめらかな風合いに。絵柄が最も映えるようイメージしながら、革包丁で、一枚一枚裁断していきます。コーヒーの麻袋がバッグになる。そこには、リユースだからこその、たいへんな手間がかかっているのです。コーヒー輸入商社の倉庫に足を運び、埃だらけになって麻袋をセレクト。せっかくの柄が歪まないよう細心の注意を払いながら袋を解体し、アトリエの屋上で天日干し。それを縫い合わせ、50mものロールに仕立てます。

 

 出来上がったバッグのコーナーの革パッチ、底鋲は、当初のデザインにはなかったもの。友人たちが実際に使い、擦れや傷みが気になるところを報告してもらったそう。そして、細やかな修正を積み重ねて、バッグの耐久性を高めました。
岡本さんの使うミシンの音は軽快で、なかなかのアップテンポ。素材作りから縫製まで、すべて岡本さんの手仕事ですが、ある程度の個数をまとめて製作するため、効率も考えて作業しています。
「いわゆる“ 手づくり品” は作りたくなかったんです。ちゃんと工業製品として通用するものも作りたい。だから、その中間、ちょうどいい位置にいるのかもしれません」

 

麻袋が届けてくれた幸せ。
今度はバックを通して笑顔を届けたい。

 

「パナマやドミニカの麻袋はカラフルですね。最近はハワイの麻袋も人気です。いいコーヒーほどいいプリントが使われているそうです」。麻袋は自家焙煎のカフェでアルバイトしていたときから「もったいない」と思っていたそう。第1子の子育て中、実父がバッグの素材にどうかと持ってきてくれて麻袋と再会し、『KISSACO』が始まりました。

 一方で、現実の生産現場にいたからこそ知ることとなった、安価な革製品の背景にある不当な労働、環境汚染、廃棄の多さといった“ よからぬものづくり” に対する、岡本さんのクリティカルなまなざしは、自分のものづくりが真っ当かを、常に問いかけるものでした。
「自分が仕入れている材料がどんなふうに作られているか、どんな人たちが作っているか、それも知らずにいたら、本当にいいものづくりとは思えないんです。それくらいプロダクツに責任を持つということが大切なんだと思います」
また、ドキュメンタリー映画「おいしいコーヒーの真実」を見て、エチオピアのコーヒー産業の実態に詳しいフェアトレードコンサルタントの北澤肯さんに会いに行きました。その出会いは、現在、売り上げの一部を寄付しているNPO法人『Seed to Table』へとつながっています。

 

Profile

岡本由梨

1981年生まれ。バッグメーカーに勤務したのち、2009年より『KISSACO』をスタート。二児を育てながら、バッグ製作に励む毎日。夢は寄付先にしているベトナム農村部の女性が雨期でも収入を得られるようにバッグ製作の一部を依頼して、共にものづくりをすること。

http://www.kissaco.net/

 

ショップ情報

KISSACOの商品は
こちらから購入できます。

http://kissaco.thebase.in/

「自分だけの世界で終わるのか、それを世の中に発信して還元していけるのか。これはちゃんと社会とつながらなきゃいけないって思ったので、この道を選びました。だから自分が胸を張れないとイヤ。自信を持って、胸を張って、開示できるものづくりでないと。小規模でも自信を持ってものづくりをしている方の作品が増えて、それを買いたいという消費者も増えたら、世の中はもっと変わると思うんです」

 

 岡本さんには大きな夢があります。それは、麻袋自体の価値や認知度を高めていくこと。
「麻袋が私にこんなに幸せを届けてくれました。私のバッグもいつか生産農園に届けたい。笑顔の連鎖をつなげていきたいですね」

 

 

Text:Ray Suzuki Photo:Masatake Ishiko

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